まもコラム

特養における「見守り機器等の活用」による 夜間人員配置基準の緩和について

特養における「見守り機器等の活用」による 夜間人員配置基準の緩和について

はじめに

令和3年度の介護報酬改定から早いもので半年が経とうとしています。
各サービス事業所におかれましても、改定要件への対応が一段落して、収入面に関する改定の影響を振り返っているところではないでしょうか。

ちなみに今回の改定資料の中では、キーワードとして「見守り機器等の活用」が散見されましたが、この見守り機器等の活用に関しては、活用することによってどのような影響があるのかイマイチわかりづらいので、今回は「特養(介護老人福祉施設)」を例に、見守り機器等を活用することでどのような影響があるのかを「夜間の人員配置基準の緩和」という視点から見てみます。
※視点を絞るため、夜間職員配置加算の単位数や要件の詳細は省かせていただきます。

先ずは夜間の人員配置基準の緩和について、以下の3項目を復習してみましょう。

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人員配置基準の緩和について

❶ 従来型の夜間の人員配置基準の緩和※ユニット型は緩和ナシ

規定に基づき算出される配置人数に0.8を乗じて得た数以上

  1. 夜勤時間帯を通じて、利用者の動向を検知できる見守り機器を当該事業所の利用者の数以上設置していること。
  2. 夜勤時間帯を通じて、夜勤を行う全ての介護職員又は看護職員が情報通信機器を使用し、職員同士の連携促進が図られていること。
  3. 見守り機器及び情報通信機器(以下「見守り機器等」という。)を活用する際の安全体制及びケアの質の確保並びに職員の負担軽減に関する事項を実施し、且つ、見守り機器等を安全かつ有効に活用するための委員会を設置し、介護職員、看護職員その他の職種の者と共同して、当該委員会において必要な検討等を行い、及び当該事項の実施を定期的に確認すること。
❷ 夜勤職員配置加算の0.9人配置要件

従来型、ユニット型ともに、人員配置基準+0.9名

  1. 見守りセンサーを入所者の10%以上に設置し、センサーの安全有効活用を目的とした委員会の設置と検討会の実施をしていること。
❸ 夜勤職員配置加算の0.8人(0.6人)配置要件
従来型
❶の人員基準緩和を適用する場合は人員配置基準+0.8人。適用しない場合は+0.6人
※人員基準緩和を適用する方が配置数は少ない。
ユニット型
人員基準+0.6名以上
  1. 見守りセンサーを入所者全員の100%以上に設置し、センサーの安全有効活用を目的とした委員会の設置と検討会の実施をしていること。
  2. 夜勤職員全員がインカム等のICTを使用していること。
  3. 安全体制を確保していること。

いかがでしょうか。夜間の人員配置を算出するのに「配置基準の緩和」と「夜間職員配置加算の要件緩和」が組み合わさるので、ちょっと複雑ですね。

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では、もう少しわかりやすくなるよう、前記の3項目を踏まえ、従来型の特養において、夜間の人員配置がどのようになるか、計5パターンに分けてみます。

夜間の人員配置の場合

見守り機器等の設置(活用)による「夜間職員配置加算」および「夜間の人員配置基準緩和」のパターン

従来型

① 見守り機器等を設置(活用)していない、且つ、夜間職員配置加算を算定していない場合

夜間の人員配置

定員25名以下 1.0人
定員26 ~ 60名 2.0人
定員61 ~ 80名 3.0人
定員81 ~ 100名 4.0人

② 見守り機器等を設置(活用)していない、且つ、夜間職員配置加算を算定している場合
  ※定員30名以上の施設が対象

夜間の人員配置

定員30 ~ 60名 2.0人 + 加算要件分:1.0人 = 3.0人
定員61 ~ 80名 3.0人 + 加算要件分:1.0人 = 4.0人
定員81 ~ 100名 4.0人 + 加算要件分:1.0人 = 5.0人

③ 見守り機器等を10%以上設置(活用)している、且つ、夜間職員配置加算を算定している場合
  ※定員30名以上の施設が対象

夜間の人員配置

定員30 ~ 60名 2.0人 + 加算要件分:0.9人 = 2.9人
定員61 ~ 80名 3.0人 + 加算要件分:0.9人 = 3.9人
定員81 ~ 100名 4.0人 + 加算要件分:0.9人 = 4.9人

④ 見守り機器等を100%以上設置(活用)している、且つ、夜間職員配置加算を算定していない場合

夜間の人員配置

定員25名以下 1.0人
定員26 ~ 60名 1.6人
定員61 ~ 80名 2.4人
定員81 ~ 100名 3.2人

⑤ 見守り機器等を100%以上設置(活用)している、且つ、夜間職員配置加算を算定している場合
  ※定員30名以上の施設が対象

夜間の人員配置

定員30 ~ 60名 1.6人 + 加算要件分:0.8人 = 2.4人
定員61 ~ 80名 2.4人 + 加算要件分:0.8人 = 3.2人
定員81 ~ 100名 3.2人 + 加算要件分:0.8人 = 4.0人

皆さんが所属されている特養は、どれに当てはまるでしょうか。

前記の通り、従来型の特養においては見守り機器等を100%設置(活用)することで、最低基準の人員配置と同等の人数で夜間職員配置加算を算定できることが読み取れます。

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では更にわかりやすくなるよう、これを定員70名の従来型特養で試算してみましょう。

定員70名の従来型特養の場合

介護報酬の視点

定員70名であれば、

夜間職員配置加算(Ⅲ)ロ 160円×70名×月30日間=336,000円

なり、年間では4,032,000円となります。

人員配置の視点

定員70名で、「見守り機器等ナシ」で夜間職員配置加算を算定している場合は、夜間の職員を4名配置しないといけないので、時間換算だと、4名×16時間(夜勤)×月30日間=1,920時間の夜間配置が必要ですが、 「見守り機器等100%アリ」で夜間職員配置加算を算定している場合は、3.2名×16時間(夜勤)×月30日間=1,536時間となり、 その差は384時間÷16時間=夜勤24回分の配置を緩和することが出来ます。結構大きな数字ですね。

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おわりに

上記の2つは経営の視点で試算してみましたが、介護職員数が2025年に32万人、2040年には69万人が不足すると言われている介護業界においては、経営面だけでなく、事業の運営面でも、見守り機器等の活用やICT化により、今よりも少ない人員配置で事業運営ができる体制を作ることが、特養だけでなく全ての介護施設において必要ではないでしょうか。

見守り機器等を「導入する」、「導入しない」の議論ではなく、明日からでも「どの機器を使うか」を検討されてみてはいかがでしょうか。

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吉橋 謙太郎
特定医療法人谷田会 経営企画部長

1997年に医療法人徳洲会に入職。その後、理学療法士資格を取得後、医療法人社団郁栄会を経て、医療法人フォーチュンにて法人統括責任者に着任。2017年から特定医療法人谷田会・谷田病院の経営企画部長に着任する。労務管理、IT管理などを行いつつ、地区医師会などで医療介護総合確保基金を活用し複数の事業運営を実施。
これまでに、介護老人保健施設、通所系の事業所、診療所、MS法人の立ち上げや運営管理を経験。経営支援実績としては、各種介護事業所や有料老人ホームの立ち上げ、管理者支援を行う。

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