まもコラム

夏の介護は要注意!
高温多湿が高齢者にもたらすもの

夏の介護は要注意!  高温多湿が高齢者にもたらすもの

はじめに

梅雨の時期から9月が終わるころまでの期間は、高温多湿で高齢者が生活するには過酷な環境となりやすくあります。
この環境は、高齢者の心身に悪い影響を与えることから、介護者にとって特に注意が必要であることは皆さんも理解されているのではないでしょうか。
そこで、今回は高温多湿が高齢者に与える心身への影響と、その対策について考えてみたいと思います。日々行っている介護の参考にしてみてください。

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高温多湿が高齢者にもたらすもの

近年は梅雨の時期であっても高温となる日が増えている印象が強いのですが、皆さんはどのように感じているでしょうか。
気象庁の発表しているデータを見ると、10年前の2012年と昨年の2021年を比較してみても6月における真夏日は増加しています。こういったことを踏まえ、介護支援専門員である私は、梅雨の時期から9月が終わる頃まで、高齢者が熱中症になってしまわないように警戒態勢とっています。
警戒態勢をとるために何を考え、どのような対策をしているのかをこの章ではお伝えしていきます。

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熱中症と高齢者

高齢者や障害を持っていて介護を必要とする人は、体温の調節能力が低下しているケースが少なくありません。実際に、夏日に近い気温であるにも関わらずこたつを使用している方や、中には冬用やそれに近い厚手の衣類を着ている方もいます。
本人たちは「ちょっと寒いかな」「暑くはないよ」と話されます。しかし、暑さを感じないからと言って身体にも影響がないということはなく、そのままだとやはり熱中症や、それに近い状態になってしまいます。
時には命にかかわる場合もあるので、本人は暑くないと言っていたとしても注意が必要です。

1.過ごしやすい環境づくり

これらを防ぐためにまず考えないといけないのは、暑さから身を守るためにエアコンを使用して温度と湿度を管理し、過ごしやすい環境を整えることです。
エアコンの使用を嫌がる方や苦手な方もいらっしゃるかもしれませんが、命に代えることはできません。エアコンを使用して寒いと感じるようであれば薄手のカーディガンを羽織っていただくなど、工夫をしてみてください。
特別養護老人ホームやグループホームなどの宿泊型の介護施設であれば、このあたりの対応をうまくしている印象はあるのですが、問題となってくるのが自宅を拠点にして生活をしているケースです。ご家族が同居しており、温度と湿度を管理できていればよいのですが、実際そこまで手厚くサポートをできているケースは稀ではないでしょうか。
ご家族が同居していても日中は独居である場合もよくありますし、日中・夜間ともに一人、もしくは高齢者のみの世帯も多くあります。そうなってくると温度と湿度を管理することが難しくなってきます。
では、このような場合どのような対策を取ればよいのでしょうか。

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2.在宅での対策

まず、人が快適に過ごすことができる温度は、26~28℃と言われています。湿度については、40~60%と言われています。
そして、この環境を保つために自宅を拠点にしていてもできる対策を下記に挙げます。

  • 家族が朝昼夕のいずれかの時間帯に様子を見に行き環境を調整する
  • 家族以外の親戚や地域の住民、民生委員に自宅へ様子を見に行ってもらい環境を確認し、必要であればエアコンを使用してもらう
  • 介護サービスを利用しているのであれば、ケアマネジャーに相談しデイサービスの送迎時や訪問介護で自宅へ介護スタッフなどが訪れた際にエアコンを使ってもらうように依頼する

上記であげた方法は正直なところ、これをしたから確実に環境を整え熱中症を予防できるというわけではありません。ただ、確実に熱中症になるリスクを下げることにはつながります。大切なのは今お伝えした「リスクを下げる」という考え方です。そのため、こういった方法を複数準備し、対応しておくことが重要と言えます。

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3.水分の摂取

この他に、水分を摂取することも熱中症予防において重要です。
高齢者は水分を飲みたがらない傾向が強いので、好きな飲み物を用意することや、水分の代わりにゼリーを提供するのもひとつです。また、食事に水分の含有量が多い物を用意するように工夫してもよいでしょう。
水分摂取については一度に多くではなく、「少しでもよいからこまめ」を意識しながら代替えなどの工夫を織り交ぜてみてください。また、上記の環境を整えるための方法を行う際に、水分もセットで対応できるようなサポートを依頼しておくのもよいでしょう。

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不快感と認知度の関係

人が快適に過ごせる湿度は一般的に40~60%とお伝えしました。湿度が60%を超えると、人は不快に感じます。ここで考えてみたいのは、高湿度が高齢者の心にどのような影響を与えるのかについてです。このことを知っておいていただくと、高齢者の変化の理由に気づきやすくなり、必要な対応をとりやすくなると思うので参考にしてみてください。

高齢者の多くは、程度に差はあれども認知能力が低下していることが多いと言えます。たとえ認知症の診断を受けていなくても、記憶能力やものごとを判断する力、時間や場所、人について理解する能力などが低下していると考えておくのがよいでしょう。
このような状態にあると、気候による不快な気持ちを認識しづらくなります。やさしく言えば、「なぜかわからないけど心が落ち着かない」といった状態になってしまいやすいのです。

そもそも、高齢者の特徴でもある気候の変化に身体がうまく対応できないことに加えて、認知能力の低下により温度や湿度を適切にコントロールできなかったり(例:エアコンの使用方法がわからない)、衣類を気候に合わせたものを選べなかったりするので、不快な環境に身を置きつづけることとなります。その結果、気持ちが落ち着かなくなってしまいます。
それに加えて、認知能力の低下が著しい人は、自身がどのような環境に身をおいているのか理解や判断することが難しいので、「何が起こっているのかわからないが不快」といった状況に陥ってしまいます。

こういった高齢者の場合、何が起こっているのかわからないので、状況を適切に言葉にして表現することが簡単ではありません。その結果、不快な感覚や何が起きているのかわからない状態は、イライラや不安などのネガティブな気持ちとして心に残っていきます。気持ちというのは上乗せされていきやすく、ネガティブで嫌な気持ちは積み重なると、「なぜかわからないが機嫌が悪い」「気持ちが上向かず暗くなりがち」など目に見える形で表れていきます。
こういった状態が続くと、認知能力は低下していきやすくなってしまいます。湿度の高さによる不快な気持ちは、巡り巡って認知能力の低下につながる場合もあるのです。

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おわりに

梅雨の時期から夏季における高温多湿な環境は熱中症になりやすく、さらには認知能力の低下をまねく恐れがあることを紹介してきました。
どちらも未然に防ぐためには、快適な環境を保つ必要があります。エアコンによる温度と湿度の管理や水分の摂取、頼ることができる人を可能な限り頼る等、少しでもリスクの軽減を図ることを意識してみてください。これらとは別に、近年では見守り機器を使用するという選択肢もあります。
弊社でも室内の温度や湿度を遠方からでも確認できるものを取り扱っています。これらをうまく活用していただくことで、より高齢者の生命と健康を守りやすくなるのではないでしょうか。
興味のある方は参考にしてみてください。

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【参考資料】

有田 和弘

介護の現場で介護スタッフ・介護支援専門員として10年以上の経験を積む。
現在は小規模多機能型居宅介護施設で介護支援専門員として高齢者の生活支援に携わりながら、介護に関する記事を書くライターとしても活動中。

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