まもコラム

1人で悩まないで! 「家族が認知症かも…」と思ったら
~気づくポイントと取りたい行動~

1人で悩まないで! 「家族が認知症かも…」と思ったら  ~気づくポイントと取りたい行動~

はじめに

最近ご家族のもの忘れが増えてきて、
 「これはひょっとしたら認知症かもしれない…」
 「大切な家族がある日突然認知症になったらどうなるんだろう…」
とお悩みの方もいらっしゃるでしょう。

では、ご家族が認知症かもしれないと思ったらどのような対応をすればよいのでしょうか。
今回は、認知症の概要や初期症状、気づくポイント、そして、実際にそうかもしれないと思った時にどうしたらよいのかをお伝えしていきます。一緒にみていきましょう。

認知症ってどんな病気?

認知症とは、脳の病気によって認知機能が働きにくくなり、日々の生活に問題がでている状態のことを指します。

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「加齢にともなうもの忘れ」と「認知症にともなうもの忘れ」

「加齢にともなうもの忘れ」と、「認知症にみられるもの忘れ」はよく混同されるのですが、「加齢にともなうもの忘れ」は、体験の一部分を忘れてしまうことを指します。

「加齢にともなうもの忘れ」の中でも、記憶力は低下していても日常生活に支障がない(軽度の認知症に至らない)場合は、軽度認知障害(MCI)となります。

一方、認知症の場合は、もの忘れの自覚がないまま症状が進行していき、やがて体験の全てを忘れてしまうなど、日常生活に大きく支障がでてしまっている状態を指します。

では、認知症の原因にはどのような脳の病気があるのでしょうか。詳しくみてみましょう。

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認知症の原因となる主な脳の病気の特徴

認知症の原因となる病気は約70~100種類もあるといわれています。

その中でも主な脳の病気として、アルツハイマー型認知症脳血管性認知症レビー小体型認知症前頭側頭型認知症(ピック病など)があげられます。
比較的稀ではありますが、65歳未満で発症する若年性認知症という病気もあります。

それぞれの特徴を以下にご紹介しますので、参考にしてみてください。

① アルツハイマー型認知症

脳の大脳皮質の神経細胞が消失し、脳の萎縮によって、認知機能が低下していきます。
発症は70歳以上の女性に多く、自覚症状もありません。少しずつ確実に進行していきます。特徴的な症状としては、落ち着きがなくなる、よくしゃべる、奇異な屈託のなさがみられます。

② 血管性認知症

脳梗塞、脳出血などの脳血管障害によっておこります。
60~70歳の男性に多く、初期の段階で頭痛、めまい、もの忘れなどの自覚症状があり、症状は階段を下りるように進行していきます。脳血管に障害を受けている部分と受けていない部分で差がうまれ、まだら認知症と呼ばれる症状が特徴的です。

③ レビー小体型認知症

脳全体にレビー小体といわれる異常物質が沈着して発症します。
何もないところに人や動物、虫などが見える幻視体験や、小刻み歩行や、急に止まれないなどパーキンソン症状で体全体の動き悪くなっていくのが特徴としてあげられます。

④ 前頭側頭型認知症(ピック病など)

初老期に発症する代表的な認知症疾患であるといわれています。前頭葉と側頭葉に限定して脳が萎縮していき、人が変わったような奇妙な行動を繰り返したり、決まった食事しかとらなかったりなどの決まりごとがよく見られます

⑤ 若年性認知症

厚生労働省の令和2年度若年性認知症実態調査によると、65歳未満で若年性認知症を発症された方は、全国で約35,700人。人口10万人あたり50.9人。高齢者の認知症に比べると、比較的稀な病気です。
進行が速く、原因として脳血管性認知症、アルツハイマー型認知症が多いといわれています。発症は女性よりも男性に多くみられ、働き盛りの世代で発症すると家族への影響も。若年性認知症へのサポート体制はまだ十分ではなく、社会的な課題も多いのが現状です。

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認知症発症の原因

認知症の中でも、原因の約8割をアルツハイマー型認知症脳血管性認知症が占めているといわれています。

しかし、発症の原因には脳の病気以外にも、視力や聴力など感覚器の機能が低下する身体的変化、親しい人との離別などの心理的変化など、環境が変わることによるストレスで認知症を発症される場合もあります
このように、認知度になる原因もさまざまなので、認知症とひとくくりにしないでみていくことが大切です。

ここまで認知症の原因となる脳の病気の特徴についてみてきましたが、認知症の初期症状にはサインがあります。
一緒に暮らすご家族は、どのような点に気をつけてみていけばよいのでしょうか。
次の章からみていきましょう。

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認知症の初期症状のサインと中核症状

認知症は、脳が変化してしまい元に戻らない疾患であるとされていますが、早期発見により発症を回避できる場合や症状を軽減できる場合があります
そのため、初期症状のサインや中核症状を理解し、日ごろから注意して様子を見ることが重要です。

ここでは、ご家族が気づきやすい初期症状のサインと、認知症の中核症状についてご紹介します。

身近なご家族が気づきやすい初期症状のサイン

  • 何度も同じことを聞かれるようになった
  • 置き忘れ、しまい忘れが目立つようになった
  • 時間や場所の感覚が不確かになった
  • 予定が変わると戸惑うことが多くなった
  • 会話をしていると言葉を探すことが多くなった

などがあげられます。

認知症の中核症状や周辺症状

認知症になると誰にでも認められる症状(中核症状)がいくつかあります。

  • 見当識障害
    時間、場所、人物などの日常生活に必要な情報を理解できなくなる
  • 実行機能障害
    計画を立てて実行できなくなる
  • 記憶障害
    もの忘れが悪化して、最近の日常生活に関する出来事の記憶が出てこなくなり、次第に過去の記憶も出てこなくなる

などです。

たとえば、外出先でトイレに行きたくなった時、私たちは目でトイレのマークを探して、「ここが、トイレだ」と認識します。自分の記憶と捉えた情報を照らし合わせてからトイレに入りますよね。
しかし、認知症になると中核症状にあげた障害により認知機能が働きにくくなり、トイレを探す一連の流れがうまくつながらなくなるのです。

また、目印を探せず、今自分がどこにいるのか分からない状況になると、不安から落ち着かなくなる場合もあります。
このような不安などから起こる行動や症状は、行動・心理症状(周辺症状)といわれています。

周辺症状は、実際の介護の現場では、場所を変えたりお声がけをする人を変えたりすると不安感が和らぎ、落ち着く場合があります。

このように、環境や関わる人達の働きがけによって改善されることもありますので、ご本人がなぜそのような行動を起こすのかの背景をよく理解して援助を行うことがポイントです。

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ご家族が認知症かもしれないと思ったら

ここまで認知症の概要や初期症状のサインについてご紹介してきましたが、実際にご家族が認知症かもしれないと感じられた時に、どのような対応をしたらよいかも考えておきたいところです。
ここでは、ご家族ができる対応を紹介していきます。

健康状態を記録しておく

まず、ご家族ができることとして、健康に関することがあげられます。
血圧、脈拍、呼吸、体温など1日の中で変動があるため、普段の平均的な数値を知っておくことが大切です。
特に高血圧は認知症の合併症の一つでもありますので、血圧を決まった時間に測る習慣をもちましょう

そして、記録をとることも大切です。
栄養状態や排泄、排尿状態、睡眠状態についても、ご本人にどのような支援が必要かを知る目安になります。食事内容や、排泄、睡眠リズムについては、ご自宅での様子をかかりつけ医やケアマネジャーに相談する時にも役立ちます。

このような数値の把握には介護IoT機器を使うことも有効ですので、導入を検討してもよいでしょう。

在宅介護でもお使いいただける製品はこちら

認知症ケアの専門職に相談する

お住まいの地域のかかりつけ医地域包括支援センターに相談してみましょう。

かかりつけ医には、早期の段階での発見や専門医療機関へつなぐ役割があり、地域包括支援センターには、ケアマネジャー以外にも保健師や社会福祉士が常勤しています。今のご本人にあった適切な認知症ケアを行う施設や関係機関におつなぎし、必要に応じて多職種による担当者が会議を行います。
ご本人へ適切なサービスが提供できるように、専門職がチームで協力してサポートを行うので安心です。

家族会に参加してみる

認知症のご本人やご家族を支える団体として、全国的に活動しているのが、公益財団法人認知症の人と家族の会です。
全国47都道府県に支部があり、介護家族、ご本人が交流する場として定期的に「つどい」を開催しています。

他の方の介護体験を聞いてよりよい介護方法を知れたり、医学や介護、介護保険制度などについて勉強ができます
また、自分と同じ悩みをかかえる方との交流を通して、精神的負担が軽減されるかもしれません。通うのが難しい場合は電話での相談も行っています。

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おわりに

目の前のご家族が認知症であると分かったとき、そのご本人の視点に立って対応するのが非常に大切です。

とはいえ、今までの様子と変わってしまったご本人を目の前にすると困惑してしまうという方もいらっしゃるでしょう。そんな時は一人で悩まずに専門機関へ相談をしたり、介護体験を話し合える場に参加したりするなど、社会との交流を通して周囲のサポートも活用していきましょう

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【参考資料】

澤 優歌

フリーライター。
介護職員・介護福祉士として訪問介護、認知症デイサービス、認知症高齢者グループホームの現場に勤務。
現在は、介護分野を中心にウェブメディアなどで執筆中。

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